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【今日の一冊】21世紀の資本


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本書の紹介

 本書の著者は、フランスの経済学者トマ・ピケティ。2013年にフランス語で公刊され、2014年4月には英語訳版が発売されるやAmazonの売上総合1位に輝くなど大ヒットしました。アメリカでは2014年春の発売以降、半年で50万部のベストセラーとなっており、多くの言語で翻訳されています。長期的にみると、資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きい。その結果、富の集中が起こるため、資本から得られる収益率が経済成長率を上回れば上回るほど、それだけ富は資本家へ蓄積される。そして、富が公平に分配されないことによって、社会や経済が不安定となるということを主題としている。この格差を是正するために、富裕税を、それも世界的に導入することを提案している。

転機となりうる歴史書

 「r>g」、「グローバル資本課税」等のインパクトある主張が大きく取り上げられていますが、本書の貢献はそれだけではありません。本書は資産の歴史書であると同時に、マクロ経済学の歴史書、そして著者自身の歴史書でもあります。彼の研究姿勢は今後のマクロ経済学を大きく展開させるかもしれません。本書は計量分析をしなくても、データを見るだけでこれほど豊かな示唆があり、これほど多くの間違いがあったのだと気づかせてくれます。モデルの研究者になるのではなく、現実に目を向けなければならないことを教えてくれます。また、本書は学際的研究の重要性を強く強調します。「r>g」の法則が歴史上唯一覆ったのは第二次世界大戦以降の数十年間です。物理的な資本の破壊と権力者の衰退の結果、増税に反対する勢力の力が弱まったことが原因と推測されます。このような「政治的」「社会的」な要因しか、経済法則「r>g」を狂わせたことがないという「歴史的」事実は、隣接する学問分野と共同で研究していく必要性を強く感じさせます。

格差是正に向けた「富裕税」

 資本収益率が経済成長率を上回るため、資本家は益々富み格差は拡大する、そしてこの傾向が今後も続くだろうという分析については、本書の発売前から多くの紹介、書評があり、それに対する、トリクルダウン効果や資本収益率の低下等アメリカを中心とする経済学者の批判も既に多く目にしています。本書において興味深いのは、これほどの専門書かつ大著にもかかわらず本書が各国でベストセラーになったという事実であり、格差に対する知識階級の切実な(こんな分厚い本に手を伸ばすほどの)問題意識の高まりが先進国に共通したものであるという大きな知的トレンドだと思います。IMFはじめ多くの国際機関が格差が経済成長を阻害するという認識を明らかにしはじめていますし、イデオロギーではなく実証的に、かつグローバルに格差の未来を論じ、格差の解消を訴えるピケティの議論が、今後先進国の知的潮流と相まって、大きな国際的な政治的解決を生み出すことができるのか、という点にこそ注目していきたいところです。

 

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